薬指の約束は社内秘で
『堪えられない痛みがあるときは、藤川さんの手でその傷を包み込んであげてほしい』

彼をずっと見守ってきた松田課長に託された想い。それに応えたいと思ったことを――。

ベッドルームに辿り着いた彼が私の体を優しくベッドの上に下ろしてくれる。

心配げに細まった瞳に、またひとつ自分の弱さを知る。


いつもたくさんの人に守られて、愛されることばかりを望んでいた私の手はこんなにも小さくて、まだまだ頼りないと思う。

どんな言葉を紡げば伝わるんだろう。分からない。
だから、素直な想いをそのまま声にした。

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