薬指の約束は社内秘で
触れ合う唇から愛しさを流し込むようにキスを重ねて、思わず漏れた吐息の合間に漏れ聞こえた、「ありがとう」という優しい響き。

ねぇ、葛城さん。それは、聞き間違いなんかじゃないよね?



彼の右手がバスローブの腰ひもを解くと、素肌を滑らす柔らかい手つきが、口内に入り込む彼の熱が、さらなる刺激を落としていく。


抱き合って触れ合える肌の感触が温かくて心地いい。

私よりも私を知り尽くした指先が、柔らかい唇が、彼を受け入れる準備を整えてくれる。

体の芯が熱くなり徐々に高みに昇っていく。

「愛」

熱を帯びた瞳で優しく名前を呼ばれる。
体を繋げるその前に、もう何度目か分からない。

思わず泣けちゃうほど嬉しい囁きが落ちてきた。


「好きだ……」

胸を大きく震わす言葉に音もなく涙が零れる。
優しく拭い去る指先から、柔らかな微笑みから、彼の愛情が痛いほど伝わってくる。

声にならない想いはどう伝えたらいいだろう。
考えても分かりそうにない。

だから、涙で濡れた瞳をめいいっぱい細めて幸せの笑みを返すと、優しいキスがそれに応えてくれた。
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