薬指の約束は社内秘で
epilogue
1年後――。
「あっ、メールきた!」
微かなBGMだけが流れる広い室内に、メールの着信を告げるメロディーが軽やかに流れる。キングサイズのベッドから立ち上がりサイドテーブルに置いたスマホを手に取った。
いま私がいる場所は、都内でも一流と名高いホテルのロイヤルスイートルームで、今日帰国する予定の彼とここで待ち合わせをしていたのだけれど。
「嘘……」
液晶画面に浮かび上がる文字に息を呑んだ。
F R:葛城 優生
SUB:悪い
―――――――
急ぎの仕事が入って、まだドイツにいる。
「仕方ないよ……ね」
用件を簡潔に告げた文面に小さくため息をつく。
一人で寝るには広すぎるベッドにボスンッと体を預けるように倒れ込んだ。