薬指の約束は社内秘で
カクテル2杯でも顔が火照っているのが自分でもわかる。

しかも今日は土曜ということもあって、暗がりのフロアには顔を寄せ合うカップルが多いことに今更気づいた。


「結局、何をしてても寂しさは変わらないんだよね……」

ふぅと小さくため息をついて椅子から立ち上がり、会計を済ませてバーを後にする。廊下に出たところでふらりと足が縺れそうになると、「大丈夫?」と誰かに肩を支えられた。

トーンの低い声がいま一番聞きたかったものと重なって振り返ると、視線の先にいたのは彼とはまったく違う男の人で、期待に膨らんだ胸は一瞬で萎んでしまった。


ドイツにいる優生がいるはずがないのに、バカだよね……

「ごめんなさい。ありがとうございます」

お礼を言ってその場を立ち去ろうとしたら、至近距離で顔を覗き込まれてしまう。

「なんだかふらついてるし、部屋まで送ろうか?」

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