薬指の約束は社内秘で
そこで葛城さんは薄い唇を閉ざし、窓から射し込む光から逃れるように顔を背けた。
一瞬、陰を帯びたように見えた瞳は気のせいじゃない。悲しげな色を宿すそれを前にも見た気がした。
誰かを信じて、裏切られて――葛城さんも傷ついたの?
そう思うと胸の奥が軋み始める。
だけど追及するのはいけない気がして、話を変えようと「あははー」なんて明るく声をあげてみた。
「本当っ、馬鹿みたいですよね。でも私は、自分に自信なんてないから。なにかミスがあったら、まず自分を疑ってしまうんです。
それでもいつかは葛城さんみたいに。いえ、そこまではきっと無理ですけど、
もう少し自信を持って仕事ができるようになれたらいいなぁって思うんですけどね」
と勢いで話してしまい、激しく後悔した。
うわっ。焦って話したもんだから、支離滅裂だって。しかも後半の仕事頑張る宣言は、絶対いらないから。
「お人よしだな」とか。「100億年かけても俺の足元にも及ばない」だとか。
痛烈な毒が吐かれるのを覚悟していたのに、葛城さんは小さく笑った。
「自信持っていいだろ。スライドが使えなかったアクシデントはあったけど。それを補う企画力と知識が役員達にも伝わったんだ」
一瞬、陰を帯びたように見えた瞳は気のせいじゃない。悲しげな色を宿すそれを前にも見た気がした。
誰かを信じて、裏切られて――葛城さんも傷ついたの?
そう思うと胸の奥が軋み始める。
だけど追及するのはいけない気がして、話を変えようと「あははー」なんて明るく声をあげてみた。
「本当っ、馬鹿みたいですよね。でも私は、自分に自信なんてないから。なにかミスがあったら、まず自分を疑ってしまうんです。
それでもいつかは葛城さんみたいに。いえ、そこまではきっと無理ですけど、
もう少し自信を持って仕事ができるようになれたらいいなぁって思うんですけどね」
と勢いで話してしまい、激しく後悔した。
うわっ。焦って話したもんだから、支離滅裂だって。しかも後半の仕事頑張る宣言は、絶対いらないから。
「お人よしだな」とか。「100億年かけても俺の足元にも及ばない」だとか。
痛烈な毒が吐かれるのを覚悟していたのに、葛城さんは小さく笑った。
「自信持っていいだろ。スライドが使えなかったアクシデントはあったけど。それを補う企画力と知識が役員達にも伝わったんだ」