薬指の約束は社内秘で
慌てて部屋のトイレに飛び込み、なんとかみんなに気づかれずにすんだけど。

やっぱり葛城さんはひどく酔っていたらしく、どうにもならない彼を松田課長が部屋の中まで運んでくれた。

(その間に、トイレからこっそり抜け出したんだけど)


今日は、あの日から5日経った木曜日。

自分一人の胸に抱え込むのが耐えきれなくなり、昼休みに美希ちゃんを誘って外に出ていた。

でも相手が葛城さんってことは、さすがに言えなくて。

友達に誘われた合コンの帰りに、名前を何度も呼ばれて抱きつかれたって話にしておいた。

だって私達の関係は、あれから何も変化はないし。
きっと葛城さんだって、あの日のことを覚えてもいない。

覚えていたとしても、「なかったことにしてほしい」

そんな風に思っているとしたら?

そんな風に頭を反芻する想いが、今日もまたこめかみを痺れさせる。

馬鹿みたい。いくら頭で問いかけたって、答えを返されることはないのに。

でも考えるのをやめようとしても頭を支配して離れず、今日も午前中に書類のミスがあった。

あんな単純なミス。そんな自分に心底嫌気がさす。
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