〜双子の憂鬱〜
「それだけ自分を大事にして来たってことだろ。そんな風に言うな。」
低い声は少しだけ怒りを含んでいた。
彼が怒ることじゃないのに、何故こんな風に痛みを共有してくれるのだろう。
「そんな怒らないでくださいって。
こういうのは笑って流してくれたらいいんですから。」
俯くしか選択肢はなかった。
ぎこちない空気、重たい雰囲気。
言わなきゃよかった。
なんで茶化しちゃったの、あたし。
「由有」
物凄く近い場所で大河内の声がして、目線を上げる。
真横に立つ、彼に驚く。
有無を言わせない強さだった。
抱きしめられていた。