〜双子の憂鬱〜

「それだけ自分を大事にして来たってことだろ。そんな風に言うな。」



低い声は少しだけ怒りを含んでいた。
彼が怒ることじゃないのに、何故こんな風に痛みを共有してくれるのだろう。


「そんな怒らないでくださいって。
こういうのは笑って流してくれたらいいんですから。」


俯くしか選択肢はなかった。


ぎこちない空気、重たい雰囲気。
言わなきゃよかった。
なんで茶化しちゃったの、あたし。


「由有」

物凄く近い場所で大河内の声がして、目線を上げる。


真横に立つ、彼に驚く。


有無を言わせない強さだった。


抱きしめられていた。


< 115 / 168 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop