〜双子の憂鬱〜
重ねる嘘
その1
何もなかったかのように過ぎ去る日々。
あっという間に約束の創立記念パーティー当日。
気乗りしないまま由有はそこに居た。
そこ、とは。
「な・・・何なの、ここ。」
目の前にあるのはきらびやか、かつ豪華な衣装たち。
創立記念パーティーとだけあって、招待客たちは皆一様にドレスを纏い、スーツもオシャレなものを着こなしていた。
「社長に言われまして。此処で由有さんの気に入ったドレスを買うように、と。」
社長秘書の田辺がシラっと言う。
「田辺さんも秘書ならそう言ってくださいっ!
あたし、不動産の人がなにしてるんだろうって、ずっと疑問だったんですから!」
初めて会った時、不動産の事務所に居た彼が大河内の秘書だと知ったのは、ついさっきだった。
「すいません、社長に言う必要ないって言われてて。
それよりどのドレスにしますか?
由有さん、スタイルいいから何着ても似合いそうですね。」
サラッとお世辞を言うあたり、やはり大河内の秘書をする男だ。
「もう・・・好きにしてください!!」
ショップの店員に丸投げするしか、気持ちのやりどころがなかった。