〜双子の憂鬱〜
「由有」

気付いたら、温もりに包まれていた。
ザワつく周りの声がする。


「だ、大吾さんっ!
みんなが見てます!」



抜け出そうと身を捩るが、腕には更に力が加わり、離したくても離せない。


「構わん・・・婚約者なんだから、いいだろう?」


そう言う彼の声が僅かに震えていた。


「そう、、、ですけど」


苦しいほどに抱きしめられて、夢を見ているんじゃないかと思ってしまう。


「お前が笑う度、苦しくなる。
誰にも見せたくない、腕の中に閉じ込めていたい。
何なんだろうな、この感情は。」


言い終わると同時に腕から解放される。


見上げた彼の表情は、切なそうに歪んでいた。


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