〜双子の憂鬱〜
「話聞きました、一軒お勧めの物件があるんです。」
そう言って多恵の同級生だという不動産屋の男性は、紙きれを差し出した。
・・・アナログだな。
端末持ってこないのがいいかも。
そう思ってから紙を手に取る。
「ここでいいです、すぐに生活したいので。」
一応考えるふりをしたものの、多恵には見抜かれてしまった。
「由有さん!!」
「いや、多恵さん、あのね、」
ちゃんと見ましたって。
そう言おうとしたその時。
「すぐに生活したいって、家出かよ、その年で。」
低い声が背後でした。