〜双子の憂鬱〜
その3
「すまん、少し酔ってるのかもしれん。」
泣き出しそうだ。
ぐっと堪えなければ涙が溢れ出してしまいそうになる。
「大吾さん、あの」
伝えてしまおう。
今ならきっと言える、そう感じた。
その時だった。
「大吾?」
背後で彼を呼ぶ声がした。
「・・・菜摘。」
彼が名前を口にした。
自分以外の女性の名前を。
・・・優しげなトーンで。
「やっぱり、大吾だ。久しぶりだね、元気にしてた?」
振り返った由有の目に、柔らかな雰囲気の女性が映る。
由有とは正反対の。
実有の様な可愛らしい女性。
「婚約したって・・・ほんとう?」
少しだけ悲しそうな表情を見せた彼女に、由有はハッとする。