〜双子の憂鬱〜
「元気出た?」
ニッコリと笑う陸は女の由有から見てもとても魅力的な男性だ。
「陸のこと、好きよ。でもそれは友達として。
親友としての”好き”だわ。とても信頼してるし・・・感謝してる。
ゴメンね、あたし、陸にとっては邪魔な女だと思う。」
自分の好きな男の側にいる、自分には敵わない”女”の由有。
なのに、そんな由有を励ましてくれる、優しい陸。
「いや、そんなことないよ。
他の女に大吾を取られるのは嫌だったけど・・・。
由有にならいいって思えるからさ。俺も由有のこと、好きだし。
さっきも言ったけど、初めて女の子に”好き”って感情を持ったんだ。」
そう言ってからマグカップを手に取る。
湯気が上がるコップに口をつけ、一口飲み干してから陸は続けた。
「俺はさ、実有ちゃんを知らないでしょ?
可愛いって言葉の意味を真っ直ぐ受け止めて、誰かと比べたりとかはしないよ。
確かに双子ってそっくりでさ、見分けつかない人もいるとは思う。
でも、生きてきたらなんらかの違いが生まれて、それぞれに良いとこがあって、悪いとこが生まれて。
2人を比べるのはおかしな話なんだ。
同じ顔をしていても、別の人なんだから。」
「別の人・・・」
「そう。ただ、それだけなんだよ。
ひとつひとつ、好きになるポイントが違ってた。
顔や身体って後からついてくるものだと俺は思うんだ。」