〜双子の憂鬱〜

その2

今日は多恵とランチの約束。


彼女も旅館の手伝いをしているから、なかなか自由な時間がない。


久々に顔をあわせる約束になっていた。



「由有ちゃん!」


待ち合わせのカフェにやって来た多恵は、年よりも若くみえる。
ママには見えない、可愛らしい人だ。



「多恵さん、久しぶり。」


右手を上げ、笑顔を見せる多恵に声をかけた。

彼女に最初、出会わなければ今の自分は居ない。


「久しぶりやね、由有ちゃん。
…なんかまた、綺麗になったんと違う?」


「やだ、変わらないわよ。
多恵さんこそ、益々若返ってる。いいことあった?」

分かっているクセにそうやって由有をからかうのは、最初から変わらない多恵の癖だ。


「えへへー、今日はその話したくてね」

席に着くと彼女は向日葵の様にぱあっと明るい笑顔を見せた。


「二人目、出来たの。」


幸せとは滲みでるものなのだろうか。
彼女の笑顔は今までで1番輝いて見えた。


「おめでとう!良かったじゃない、ずっと欲しかったんでしょう?」

「うん、もうね、旦那が舞い上がっちゃって。」


赤ちゃん、かぁ。

あたしはどうなのかな。大吾の赤ちゃん…。欲しくないわけじゃないけど、現実味がないわ。


「由有ちゃんは?大河内さんと結婚するんでしょ?」

そう尋ねられても曖昧に笑うしか出来ない自分が嫌だ。

「まだわからない。好きだけど…」


言葉を濁す。


そう。

過去の自分と向き合ってケジメをつけなければ。
でないと、先に進めない。



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