〜双子の憂鬱〜
田舎の駅は、そんなに人でごった返すことがない。
だから、待ち人なんてすぐに見つかるのだ。

感動の再会なんてものは無く、どちらかと言うと『あ、居た。』くらいの感覚だろう。


「実有・・・」

「ゆ「この馬鹿が!!」」

実有が姉の名前を口にしようとした瞬間。
それを遮るようにして叫んだのは、その彼氏・翔太だった。

「なんで実有に心配させるようなことしたんだ!!
俺が気に入らなかったんだったらそう言えばいいだろう!?」

物凄い剣幕で怒鳴る翔太。

一気に駅前の人目を集めてしまう。

「おい、君の言い分は分かるが、ここで怒鳴れば明日には街中に知れ渡るぞ。
場所を変えよう。」

大吾の言葉に俯いた由有は何も言えなかった。

翔太の事が好きだった。
実有の事も好きだった。
いつも比べられてばかりの自分が嫌いだった。

でも。


比べているのは他の誰でもなく、自分自身だった。


可愛い実有。
優しい実有。
女の子らしくて誰からも愛される実有。

変わらなくちゃ。

この街に来て、沢山の心温かい人々に会って。
甘える事を教えてもらって。

何よりも大吾に愛されて、今の自分に自信を持つことができるようになったのだもの。


言わなきゃ・・・!



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