〜双子の憂鬱〜
「敷金礼金なんか支払ってたら無一文決定だろ。田舎だとか思って安く見積もってるんだろうが、相場はたいして変らねぇぞ。
無職のうちは誰かに甘えるのも手だ。」
ニコリともせずそう言う大河内。
優しいんだか優しくないんだかわからない。
「運良く俺は余りうちに居ない。
あちこちまわってるからな。
人の住まない住宅は悪くなるばかりだ。出来るだけ手入れしたいと思ってるとこだったんだ。
…あんたさえ嫌じゃなきゃ、住処を提供する代わりに家政婦してくれたら助かる。」
差し出された鍵。
それを受け取ると空いた反対の手で握手を求められた。
そっと握ると、その手は意外にも優しいものだった。