〜双子の憂鬱〜

その4



「あれは明らかに俺の失言だ、すまない。俺の周りにいる女性で由有のように綺麗な女性で、その・・・未経験ってのが居なかったから。

言い訳にしかならんが・・・からかうつもりであって、傷付けるつもりじゃなかったんだ。」


必死にそうやって言葉を紡ぎ、由有に許しを乞う彼の言葉をただ黙って聞いていた。


途端、涙が溢れる。
甘える、という事をしてこなかった。
どうやればいいのか。
どうすることが甘える、ということなのか。
何も分からずに生きてきた。


『あー・・・今日はうちにいるから。
早く帰ってこいよ。』


照れ臭そうな大河内の声で我に返る。


彼氏でもないのになんで偉そうに言うのよ。

本当にもう、よくわかんない人。


「じゃあ、夕食の準備します。何が食べたいですか?」

そう言う声が涙声で嫌だったけど、大河内は何も聞かずに『和食』とだけ答えた。


「じゃ、急いで帰りますね。」

電話を切ってから、涙を拭う。
こんな風に堪えきれずに涙を零したことなんかなかったことに気付いた。

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