〜双子の憂鬱〜
「そう?」
平静を装って尋ねると、多恵はふふん、と胸を張って答えた。
「まず、”都会の女”!っていうツンケンした感じが無くなった。
柔らかく笑うようになったよね。」
・・・もう。
多恵までが『都会の女』発言だ。
「あと、悲しそうな顔しなくなった。
考え事してるような感じもないね。
好きだった彼のコト、吹っ切れた?」
好きだった彼・・・かぁ。
「ううん。吹っ切れなくて、正直困ってる。未だに似たような背格好の人を探してるの。」
つい、見てしまう。
茶色のくせ毛。
本人が気にしていた筋肉のついた足。
広い背中。
大河内よりは低いけど、由有より少し高い身長。
・・・笑うと見える、八重歯。
「忘れたいんだけどな・・・翔太には実有がいるんだから。」
小さな声で呟いた。
忘れたい。
出来るなら、思い出したくない。
過去の自分も。
記憶も。