アイコ
「ふぁ~あ。」
小さくあくびをする。
本当、たいくつだ。
校長の長い話は終わらないし、考えることも何も無い。
そもそも、今日の主役は私ではない。
前列にピシッと座っている1年生諸君が本日の主役なのである。
それでは私は何なのかというと、在校生代表兼入退場の演奏係…つまり吹奏楽部と言うわけで、今日この式に出席する事になったのだ。
「暇そうやね、アイコ。」
博多弁丸出しであたしに声をかけるのは、我がパートのパートリーダー丸山菜生(マルヤマ ナオ)。
「アイコが暇そうなのはいつもの事だよ。」
優しい声とは裏腹にとんでもない事を言ってくれるのは、同じくパーカッションの熊谷 寛(クマガイ カン)。
長身でメガネが特徴的な今どき男子って奴だ。
「失礼な。あたしだって忙しい時くらいあるさ。」
ニヤニヤする菜生と寛を横目に、壇上を見上げる。
校長の話はまだ終わらない、