叙情

住む家がある現実

鏡前で
おかしくないよね、うん。大丈夫大丈夫。
なんて一人で鏡とのにらめっこをし
その足で、総一がいるリビングへ行くと


「こんばんわ~
お邪魔してます。
この前は、勘違いしちゃって
ごめんね」


総一の彼女が、総一の隣に座りながら
私に軽くおじぎをした。

この前・・・あぁ・・・
ラブホの帰りの事か。


思わず、愛想笑いもすべてぶっ飛んでいる私は
真顔のまま、何も言葉が出ないわけで・・・



「真弓、テレビ観るだろ?
俺、部屋行くから
気遣わず観ていいぞ」



「あ、うん。」



総一と彼女がリビングを出ていく姿を
やはり、表情すら作る余裕のない私は
ただ、見送るしかない。


そして・・・・


私ってば、何浮かれてたんだろう・・・と現実の現実を理解する。



そう、理解して・・・


失恋したようなダメージを受けるんだ。


別に、彼女がいるって事を忘れてたわけでもないし

私が特別だなんて思ってたわけでもない。



・・・ただ、



この家に、その彼女は来ない。



そんな勝手な勘違いをしてただけ。




< 108 / 264 >

この作品をシェア

pagetop