叙情
家に帰ると、母よりも先に
あの男が帰ってくる。

そんな事を考えたら
学校が終わって、すぐ帰るなんて
恐ろしくてできるはずもない。


7時まで・・・・

7時までガマンすれば
お母さんが帰ってくる。

学校帰り、帰る途中にある
木々に覆われた階段と砂利道に先にある小さな鳥居。

人の気配もなく、
あまり手入れもされてない木々。

時間を潰すには
こういう所が人目につかなくていいかもしれない。

木々で囲まれた階段を上り
砂利道を少し歩くと、

小さな神社らしきものが見えた。

誰もいない無人の神社の賽銭箱の前にある階段に座り込むと
風の音と、時折聞こえる鳥の声。

道から少し入ってきただけなのに
まるで別世界にいるような
そんな錯覚に陥ってしまいそうな空間だ。


いい場所を見つけたかもしれない。


ちょっと、不気味だけど・・・


あの家でビクビク過ごすより
全然いい。



6時50分になり
帰ろうとする頃には
辺りも暗くなり
風で揺れる木々の音も
辺りの雰囲気も更に不気味になるけれど・・・


お化けより怖いものは
人間だと・・・

今の私には思えるわけで・・・。


自分だけの隠れ場所を見つけた気分で
何だか、少しだけ
救われた気がした。






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