叙情
ダメだ。ちゃんとしようと思うのに
うまくできない。


顔がひきつって
きっと、ひどい顔していただろう。





真弓ちゃん・・・か。


布団の上に倒れ込むように寝転びながら
総一の言葉、彼女の言葉が
頭の中をぐるぐると回り続けている。



こんな思いするくらいなら
家を出て行く方が楽なんじゃないか。


そう思うのに

ここを出たら

総一との繋がりは一切なくなるわけであり

もう、会う事もないかもしれない。


総一の中から

私という存在が消えてなくなってしまうかもしれない。



そう考えると

この家を出る勇気なんてあるはずもない。



そんな事を

ずっと、ずっと考えている。




「電気ついてるみてぇだけど
真弓?まだ起きてる?」


部屋の扉前から
総一の声が聞こえる。

もう送ってきたのだろうか・・


「どうかしたの?」


「コンビニからケーキ買って来たんだけど
一緒に食わね?」


「う、うん。
でも、今は
おなかすいてないから
あとで食べるよ。」


今、顔を合わせたら
何か、とんでもない事を口にしてしまうかもしれない。

嫉妬で醜い自分を見せてしまうかもしれない。

何か・・・嫌な事を言ってしまうかもしれない。



「あとで食うなら
あっちで待っとくわ」

そんな私の思いを知るはずもない総一は
そう言うと
リビングの方へ行ってしまった。


待っとくって言われたら
行かないわけにはいかない。


会いたいのに、会いたくない。


ううん、本当は
すぐにでも会いたい。


でも、自分で自分がコントロールできなくなるのが恐ろしい。













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