叙情
体を起こし
髪を手で整えると

大きく深呼吸をした。


・・・大丈夫。



そう自分に言い聞かせ
リビングの扉を開けると


「お、来たな。
ほらほら、座って食え。
こんな夜中に食べたら太るとか
バカな事言うなよ?」


そう笑いながら
ケーキを差し出した。


何も知らない
屈託のない笑顔。


独り占めしたくなる。



「いただきます」


自分の気持ちを押し殺し
必死で表情を作り
ショートケーキにフォークを入れた。



「いちご食う?」


その言葉と同時に
総一のフォークに刺さったいちごが
私の口に差し込まれている。



「食べるとか言ってないのに
普通、いきなり突っ込む!?」


「ははは、だって
このいちごマズイじゃん」


「マズイのを
普通あげないと思うんだけど」


「まぁまぁ、そう怒るなって。
ほら」


そう言いながら
次はフォークの上に乗った
ケーキを口に入れられている。


「ちょっ・・・!?」


口の周りクリームで
最悪なんですが。
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