叙情
「総ちゃんっ!」


泣きそうな声で
怒鳴りつけているまひろさんを
完全に無視している。


こういう2人を見るのは初めてという事もあり
どうすればいいか分からず
鍋の前で立ち尽くすしかない私。


「真弓、早く。
俺腹減った」


「は、はいっ」



鍋を総一の方に運ぼうと
手をやろうとした時

横から、まひろさんの手が伸び

その鍋を勢い良く
シンクへとひっくり返すと


「あつっ!」


飛び跳ねた、鍋のスープが
まひろさんの手にかかり



「っ・・・熱い・・・」



その場に座り込むように
泣き始めてしまった。


「何してんだよ!?」


突然の音に驚いた総一が
立ち上がり
キッチンの方へ回ってくると


シンクにひっくり返された鍋

そのシンク前に座り込み泣きじゃくっているまひろさん

コンロの前で呆然としている私がいる。

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