叙情
「入らないの?」


入ろうとしない私の方を
不思議そうに振り向いている。


家にこの男と2人きりだなんて
絶対にイヤだ。


絶対・・・入らない。


「あとでまた来る・・」


「何で?
さゆりさんなら
もう帰ってくるよ?」


「お母さん、どこ行ったの?」


「びょーいん」


「病院!?何で?
具合悪いの?」


「玄関先で近所に丸聞こえだから
入ってくれない?」


入りたくない・・・。


「何で病院・・・?」


「だから、入ってって。」


・・・・最悪だ。


「何で病院なの?」


玄関の扉を閉め
上がる事なく
そのまま話し始める私を無視するように
部屋の方へと歩いて行ってしまう
バカ男・・・。


本当にイヤな奴だ。

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