叙情
「やっぱ、怖かったか・・・
ごめんな?」

そう言いながら
私にタオルを差し出した。


「ちがっ・・・違う。
全然怖くない。」


必死でそう言うけれど・・・


泣いてる理由なんて
言えるわけもなく



「ごめんな」


男は、私の顔を見ながら
謝り続けている。



どうしよう。

誤解・・・誤解とかなきゃ。


とっさに、男の体に抱きつき

その反動で
少し起き上がっていた男の体は
大きく床へ倒れこんだ。


「お、おい。真弓」


驚いた様子で
抱きつく私の背中を支えるように片手で抱きながら
体を起こした。


まるで、泣きじゃくった子供が親に抱きつくように
男の膝の上に座り、首に両腕を回し
しがみついている。


「どうした?真弓?」


突き放すわけでもなく
そのまま私の背中に腕を回し
優しく支えていてくれている。



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