叙情
「怖くない。全然怖くなかったから」


「そか。嫌じゃなかった?」


「嫌じゃない、全然・・」


「そっか。なら良かった」


そう言いながら
背中を軽く叩いた。


誤解はとけたけど・・・・

どのタイミングで
この体制を崩せばいいのか

首に回した手を解けばいいのか

男の膝から降りればいいのか・・・


・・・分からない。


「まーゆみちゃん?
そんな俺の事好き?」


いつまでも抱きついて離れない私に
からかったような声で
少し笑い
そんな言葉が聞こえる。



「そ、そんなわけないじゃん!」



怒ったようにそう言いながら
ようやく、体を離した。



「やっと、いつもの真弓に戻ったか」


大きくあぐらをかき
私の頭を撫でると

再び鳴り始めた携帯を
バッグから取り出した。





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