叙情
「入ってくれば?」

「へ!?」

「いいよ、入ってきて」

平然とした言い方で、そんな言葉が
バスルームに響き渡っている。

いいよって言われても・・・


黙り込む私に


「恥ずかしかったら
バスタオルでも巻けばいいじゃん」


あっけらかんと
そんな声が聞こえてきた。


「早くしないと金髪になるぞ」


金髪はちょっと・・・やばい。


バスタオルを体に巻き

いざ・・バスルームの中へ。



見てはいけない。

総一のいる方向を見てはいけない。

シャワーの方に体を向け
イスに座り、下を向き
薬剤を洗い流しながら

横に置いてあるボトルを頭に勢い良くかけた。


え・・・?何これ・・・・

何か・・・おかしい。


「くっあははははは
真弓、お前それローションだって。ははは」


「え?ローションって何?」


「潤滑水って言えば分かるか?
んー・・・まぁ、とりあえず
シャンプーじゃない事はたしか」


「え、うそ。何か滑るし、頭気持ち悪い」


「ったく、ほら、下向いとけ。洗ってやっから」

浴槽から立ち上がり
私の背後へ回った。


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