叙情
エンジンを切った車内のおかげで
外で話してるのが
すべて聞こえてきてしまうという
何とも気まずい状況だし・・・


「何で車に女乗せてんの!?
ねぇ!?何でラブホから出てくるわけ?
何で・・・そんな・・・
昔の総ちゃんに戻ってるの?ねぇ!?」


総一に詰め寄るように怒鳴りつけている。


けれど、当の総一は


「まひろは親父がいるじゃん。
俺も、たまには
誰かほしいって時があんだけど・・
っていうかさ、
まひろのしたい事が
俺にはさっぱり分かんないんだけど。
俺と付き合ってんのに親父と結婚した理由も曖昧なままじゃん?」


「それは・・・
仕方なかったって・・言ったでしょ・・・」


あぁ・・・泣き始めちゃった。


何だか・・・痴話ゲンカ聞くのは


総一を好きな私にとって


居心地は全然良くなくて・・・


私の方が泣きたくなる。



「ごめん、俺ちょっと
しばらく考えたいからさ・・・
しばらく・・・放っておいてくれないか?」


「え・・・?別れるって事?
や、やだよ?」


「だから、しばらく・・・」


「いやだってば!」


総一の言葉を遮るように
大きな声でそう叫んだ。


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