叙情
他のダンボールの中身も

すべて、同棲の名残が感じられる日用品ばかりだ。


だから、片付けなかったのかと
思わず、納得してしまっている私。


そして、5時間ほどかかり
ようやく、まともな部屋に変化を遂げ


ベランダは、洗濯物で外が見えないほど干され


廊下には大量のゴミ袋が積み重なっているわけだけど・・・


「ゴミの日に
ちゃんと出しなよ?
あの赤い袋のが燃えないゴミで
青い方が燃えるゴミだからね」


「たしか、明日
アパートのゴミ収集だったから
忘れずに出します・・
さて・・・
これでようやく・・」


「ようやく?」


私の横に腰を下ろす
リオンくん。


「恋人らしい事しよっか?」


「は・・?」


そんな顔をじっと見つめられると・・・


急に我に返って
意識し始めてしまっている。



「キスからどうでしょうか?」


「へ!?あ・・いえ、その・・」


慌てふためく私に


「ははは、なーんてね。
冗談だよ。
そんな逃げ腰でガードしなくてもいいってば」


そう言いながら可愛い顔で笑い


「これでガマンしとくよ。」


と、手を繋ぐと


本当に、その言葉通り
手を繋いだまま
他愛ない話をし、テレビを観て笑い

気づくと、部屋の中が
薄暗くなってきている時間になっていた。






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