On Your Marks…~君と共に~
鮮明に思い出した。
同時にあの気持ちの正体もわかった。
あの、胸が温かくなる感情。
あたし、瞬に恋してたからなんだね。
記憶をなくしたあたしも、記憶を取り戻したあたしも……
やっぱり恋するのはあなたしかいないみたい。
何もかもを思い出した後、あたしは真っ白な何もない世界に立っていた。
何もかも思い出したら、きっと私は笑顔でいるんだと思ってた。
だけど、違うんだね。
現実は……思ったよりも残酷だった。
忘れちゃいけない。
私はふと、自分の足元に目をやる。
この足は……動かない。
もう、私はあの頃のあたしのように走ることは出来ない。
もう、私は陸上ができないんだ。
あたしは、もう瞬の追い風にもうなれない。
だけど、瞬、あなたはもう、あたしの追い風無しで走れるはずだよ。
風を作り出す翼をあなたは手に入れたから。