On Your Marks…~君と共に~
「あいつとはな、澪。お前があいつに風になれって、お前があいつの追い風になるって言ったときに会ったんだ。あいつの夢の中でな」
そういって、拓夢がちゃんとあたしに説明してくれる。
「じゃ、あの時瞬が陸上に戻ってに来たのは、2人のおかげ……?」
あたしが背中を押したわけじゃなかったのかな?
「いいや、それはお前のおかげだよ。
あいつをこの白い空間に連れてくるのはとても大変だったんだ。あいつは俺らが死んでからずっと悪夢だった。光も何もない、恐怖に包まれた夢ばかりを見ていた。
だから、俺らが入る隙はなかったんだ。」
そう、啓太が少しさびしそうに言う。
「だけどな、お前があいつに光を与えてくれた。俺らはそのお前が瞬に与えたわずかな光を頼って、瞬をこの空間へ連れ出すことができた。
お前のおかげだ。あいつにはお前が必要なんだ」
拓夢が、ふっと笑顔になる。
「あいつの走り、今日見ただろう?」
啓太がすかさずあたしに質問を投げかける。
瞬の今日の走り……
「うん。鷲松競技場で走ったあの、瞬の走りでしょ?」
確かに見た。