LOVEPAIN③

私のヘアメイクが終わる頃に、
成瀬は事務所に帰って来ていた




「おつかれ様です」


メイク室から出て、デスクに座ったままの阿部さんと、

その横に立って話し掛けている成瀬に声を掛けた



二人は会話を辞めこちらに目線を向け挨拶を返してくれるが、
すぐに再び談笑を始めている



この二人以外、オフィスには相変わらず誰も居ない




「鈴木さん、相変わらず手足細いよね?

毛穴も無くスベスベとしていて、リカちゃん人形みたい」


その阿部さんの言葉に、アハハと、愛想笑いを返す



怖いんですけど




「脱毛したかいあるじゃん」


成瀬も私がキャミの上から羽織っている、
薄手のシャツから出ている腕を見ている




「脱毛は痛いから嫌ですけど、そう言って貰えるならして良かったです。

ただ、前回みたいに、
全身マッサージされたりする方が私はいいですよ」



「前回は、その日が監督面接だったから、特別」



「そうですか……」



前回みたいな、あの幸福の時間は特別だったんだ



その監督面接と言うのは、
あのコウジロウさんとの顔合わせの事なのだろう


て、事は、また監督が替われば、その新しい監督の面接があり、
再び、あのエステを体験出来る



その代わり、その磨いた裸をまた新しい監督に見せないといけないのだろうけど


あの会議室で真剣に裸を見られる、妙な雰囲気……


出来れば、もうしたくない



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