ポジティブGIRLと愉快なBOYたち
架「...ごめん、なさい」
「...」
おもむろに顔をあげて、あまりにも酷い顔をしたままそう言った。
震える唇を強く噛み締めているけれど収まらず、吸い込む息も震えていた。
小さな手をスカートの上で握りあって、涙を堪えて眉間にシワがよる架月。
架「涼依さんは、すごく優しい人で、私のお願い聞いてくれて、...」
「、うん」
架「あの...」
キョロキョロ目を泳がせながら言葉を探す架月が焦らないように、俺は相づちを打つ。
架「涼依さんのことは、好きですよ。でも...っ私たちの好きはお互い、違いますよね」
「...そうだね」
架「っ...ごめんなさい。涼依さんの虜だのなんだの言ってたくせに。私こそ涼依さんに何も...恩を仇で返すことばかり...っ」
泣き出してしまいそうな彼女に、どう声をかけたらいいんだろう。
気にしないで。大丈夫だよ。仇で返されてるなんて、思ってないよ。
そう言われて、架月はどう思うんだろう。
気が利く言葉ひとつも思い付かない。世界で一番大切な子をこんな悲しそうな顔にさせておいて。
「...架月」
こんなときに限って、午後の陽差しは切ないほど優しく照らしてくれる。
「俺に恋を教えてくれて、ありがとう」
本当に言いたかったのは、これなんだと思う。
叶う初恋よりも、痛みを知って挫折をする初恋の方が俺にとってはよかったのかもしれない。
その相手は架月じゃなきゃダメだったんだ。
淋しげに笑う彼女の頬を引っ張って無理矢理笑わせると、痛がって暴れる。
「架月は、そういう方がいい」
俺のためだけに、そんな顔しないで。
俺も多分皆も好きなのは、架月の子供のように純粋な笑顔だから。
ーーーなるべき誰かと幸せになってくれたら、もう何も望まないよ。