platonic love





放課後は、もっぱら化粧の練習。

家に帰ってから、ママの化粧道具を借りて、ギャル雑誌を机に置いて、毎日化粧をしていた。

太いアイラインに、100均で買ったつけまつげ。眉毛なんてなくてよくない?ってふと思って、眉毛も全剃り。


きっかけは、先輩に彼女ができたことだったけど、自分磨きは楽しい。

先輩だけが、あたしの人生じゃない。


そう思っていたけど




「別れたよ 今日会えない?」


思いがけないメールがきたのは彼女ができて1週間ちょっとしか経ってない時だった。


『会えます』

「何時から?」

『今でも平気です。でも門限9時なんで、それまでには帰りたいです。』

「わかった。神社で待ってる」

『階段の下にいて下さい』



急いで支度をして、家を飛び出した。

走って坂を下れば7時には神社につく。先輩に会いに行くって言ったあたしに、ママは「この前は特別。今日は門限通りだよ。気を付けてね」ってキッチンから声をかけた。





細道を小走りで通っていると、神社へと続く階段に、神崎先輩が座っていた。


「元気?」

『…好きな人に彼女ができて元気なわけないじゃないですか』

「悪かったって(笑)」

ふてくされてるあたしを見て、やっぱり嬉しそうに笑う先輩。


その笑顔を見ていたら、彼女ができたことなんてどうでもよくなった。
…もうバカ女でもいいや。

寂しくて独りが嫌いで、でもふらふらどこかに行っちゃう猫みたいな先輩。
あたしが必ずここで待っていてあげよう。どこにも行かないよって。



どこにも行かない

ずっと、好きでいるよ


先輩を想う純粋な気持ちに、嘘は一つもなかった



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