platonic love
神崎先輩は怒っていたと思う。
あたしの門限が近づいた頃、周りの先輩たちは気を利かせて「俺ら先いってるよ」って声をかけていなくなった。
「今日さ、俺このまま遊ぶから送れないけど大丈夫?」
『…はい』
「…お前も来る?」
『門限あるんで…帰ります。今日本当に楽しかったです。人生で一番、幸せな誕生日でした!!』
「なら、よかった」
『じゃあ気をつけてくださいね!』
「おう。お前もな」
笑顔で手を振った。
あたしと別の方向に歩いていく先輩が見えなくなるまで、大きく手を振った。
ーー振り向いてくれるわけないのはわかってたけど、もしも振り向いてくれた時、その先にいるのは、あたしがよかったから。
毎日一緒にいるわけでもないし、知らないことの方が多いのかもしれないけど、あたしはあたしなりに先輩のことを理解しているつもりだった。
だけど、あたしもまだ13歳になったばかりで、自分の事で精一杯だった。
「楽しかった?」って帰ってすぐママに聞かれて、今日あった出来事を笑って伝えたけど、話せば話すほど悲しくなる。
本当は二人で、会いたかった。
会ってくれるだけで幸せだったけど、誕生日プレゼントだって用意してくれてるんじゃないかって期待してた。
だから、ほんの少し悲しかった。
出逢えた頃は、一瞬でも見れればそれで満たされていたのに、先輩と話せるようになるともっともっと話したいと思ったし、メールをしてると声が聞きたくなったし、電話をしてると会いたくなった。