platonic love
10月第四土曜日、文化祭。
あたしの中学は、文化祭といっても、名前だけで特に生徒の出し物もないし、合唱コンクールと合同。
神崎先輩は、やっぱり不参加。
誕生日以来会うこともない。
電話もかかってこないし、そもそもメール自体ほとんど返ってこない。
先輩の中であたしはもう面倒くさい存在でしかないんだと思う。
突然スイッチが入る先輩。
メールをしてくれていたのに。電話をかけてくれたのに。会ってくれたのに。
先輩の行動が、あたしには理解できなくて、もうどうしようもなかった。
合唱も終わり、ユヅキ、サキ、マコと校舎内をふらふらとしてると
職員室の前の廊下で、怒鳴り声がした。
ーーそこには大勢の先生に囲まれて押さえつけられながらも暴れている、神崎先輩の姿…。
『ー神崎先輩っ!!!』
走るな、廊下。と壁に貼られた模造紙を思いっきり無視して、あたしは先輩の元へ走ったけど
「武藤!こっちに来るな!!」
「邪魔だろ!!」
担任の倉田の怒鳴り声に足を止めた。
神崎先輩は、三年の担任の先生に怒っているみたいで、胸ぐらを掴みながら、何か言ってたけど、聞き取れない。
『…先輩っ!!どうしたの!?』
『ねぇ!!』
『神崎先輩っ!!』
あたしの声にやっと気付いた先輩は、押さえつけていた先生を振り切ってそのまま下駄箱に向かって行く。
追いかける先生もいたし、職員室に戻る先生もいた。
いつのまにか廊下は静かになって、あたしだけがそこに立ったまま
『…あ』
足元に、学ランの金ボタンが落ちていることに気付いた。