秘め恋*story2~学校で…~
「はぁ。」
今のはプチハッピーなため息。
仕事から帰ってからも、佐伯先生のあの声と、
あの言葉と、あの照れた笑みが頭から離れないでいた。
佐伯先生…格好いい。
あまり年下には興味がなかった私が、気になってしょうがないでいる。
他のママさん達がキャーキャー言うなか、自分は結婚してるし、息子の担任だし、なんて他人事のように端から見てただけだった。
でも、ダメ。心が乾き出してる私に佐伯先生という存在は、どんどん染みてしまう。
佐伯先生は帰り際にまた私に声を掛けてくれて…
『隆くんも進路の事とかありますし、お母さんも何か困ったことがあれば、いつでも相談してくださいね。』
生徒の保護者に対してごく普通の対応なのかもしれないけれど、それでも嬉しい。
私でも気にかけてくれるんだ。
家に帰れば、私を気にかけてくれる人はいない。だから、反射的に嬉しくなってしまうんだ。
私は、ドレッサーの鏡の前であの高い美容液クリームを塗りながら、久々の胸のときめきを感じていた。
でも、そんな時に限って…
「何、にやけてるんだ?」
「あなたっ…」
いつの間にか飲み会から帰ってきた夫が寝室のドアの前に立ってこちらを見ていた。
全然気づかなかった。
顔、にやけてたんだわ…。
やだ、気を付けなきゃ…。
そんな事を思っていると、
「有子、こっちへ。」
まさか。
信じれない気持ちで振り返ると、ベットへ座って笑顔で私を手招きする夫がいた。
胸がざわっとした。
今さら…そんなわけないわよね。
久しぶりに見た夫の笑いかけた表情に戸惑いつつ、ベットへ近寄る。
「たまにはいいだろう?」
「え…」
私に拒否権はなかった。
酔った夫の気まぐれで、久々の夫婦の営み。
筋肉の落ちた夫の腕を掴みながら、ふと思い浮かぶのはあの筋肉質なたくましい腕。
夫の年寄りみたいな弱々しい呻き声。
想像した。
あの人は掠れた声でどんな風に熱い吐息をもらすんだろう。