秘め恋*story2~学校で…~
学校へ行くと、テスト期間中ということもあってすでに生徒のほとんどは下校していた。
スリッパに履き替え、職員室に顔を出すと、すぐに佐伯先生が走り寄ってきた。
「すみません、お呼び立てして。
こちらへどうぞ。」
「はい。」
私は促されるまま、佐伯先生の後に付いていった。
入ったのは2階の生徒指導室。
勧められたソファーへ座ると、私はすぐに口を開いた。
「あの先生…隆がケンカって本当ですかっ?」
「あ、えぇ。そこまでひどい殴り合いではなかったんですけど。いつもの隆くんが落ち着いてる子なので、少し気になりまして…」
「そう…ですか。どうしてケンカなんて…」
「お母さん、何か隆くんに変わった事とか気づかれた事はないですか?」
前に座る佐伯先生に問いかけられ、私は考えてみた。
でも、分かるはずがない。
だって、うちの家族は形だけの家族のようなものだもの。
あの子と必要最低限の会話しかしていない。
考えれば考えるほど、心が重くなっていく。
「お母さん…?」
「あ、すみません…分かりません。」
黙り込んだ私を心配そうに見つめる佐伯先生に慌てて応える。
「お母さん、大丈夫ですか…?」
「え…?」
「ツラそうな顔をしてる。」
予想外の佐伯先生の言葉に、固まってしまった。
私…ツラそうな顔…してる?
誰にもバレないように気をつけてたのに。
隠すように顔を背けると、またも予想外の言葉が向けられた。
「お母さん、ツラいなら頼って下さい。」
あの少し掠れた声で、
「俺に出来ることなら力になりたいんです。」
思わず頼ってしまいそうになる優しい声で…
ダメ。
この人は息子の担任。
だだの教師と保護者の関係。
家にいるだけで寂しい。
なんて、言えるわけない。