秘め恋*story2~学校で…~
「そんな事ないです。
有子さんは、よく頑張ってる。
頑張り過ぎなくらいです。」
そう言って、佐伯先生は私の頭を柔く撫でた。
10歳近く年下の佐伯先生に頭を撫でられて、
これでもかってくらい顔が熱くなった。
私が照れたのが分かったのか、佐伯先生はクスッと笑うと耳元で“有子さん、可愛いです”なんて囁かれた。
どうしよう。
いい年をしてこんなにドキドキしてる。
それから、再びソファーに座り直した私と佐伯先生。
でも、さっきと違うのは佐伯先生が私の正面じゃなく隣に座ってるということ…
「有子さんが何故か寂しそうに見えたのは、
俺の勘違いじゃなかったんですね。」
何となく気づいていた佐伯先生に、私はぽつりぽつりと自分の心のうちを話した。
家にいても、寂しさしか感じないこと。
家族が家族でないと感じること。
自分がなんの為にいるのか分からなくなってること。
佐伯先生は優しく手を握って話を聞いてくれた。
たまに握った手をぎゅっとしてみたり、指を優しく絡めてみたり、その度に私はドキドキする胸を押さえた。
「俺こそ…教師失格です。
教え子の母親をこんなに好きになってしまってる。」
「佐伯先生…」
「俺は、あなたの心の拠り所になりたい。」
佐伯先生の掠れたどこかホッとする声を聞きながら、私の気持ちはもう分かっていた。
夫もいる。隆もいる。
妻であり、母でもある。
「佐伯先生…私の心、潤してもらえますか?」
でも、その前に一人の人間。
ううん…一人の女なの。
「溺れるくらい満たしてあげたい。」
二人はどちらかともなく、
顔を寄せた…そっと唇が重なる。
じわりと感じる安心感。
いつの間にか私の頬に涙が伝っていた。
寂しい涙じゃない。
罪悪感の涙じゃない。
…嬉しい涙。
「泣かないで…?」
「何だか…嬉しくて。
よくないことだって分かってるのに…
今、すごく幸せな気持ちです。。」
本当に。
自分が必要とされてる、愛されてるって感じられるなんて…もう一生ないと思ってた。
幸せを感じられるなんて、諦めてたのに。
「佐伯先生…ありがとう。」
私は佐伯先生の耳元でそっと囁いた。
そして、今度は私から彼を抱き締めた。