初恋スクランブル
【天乃君の恋愛】
好きな人には好きな人がいる。
よくドラマや漫画である展開だ。
そんな展開が自分の身にあるなんて思ってもみなかった。
正直に言って俺はモテる部類に入ると思っている。
女に不自由したことはないしな・・・。
そんな俺が好きになった女は俺のことを全く見ていなかった。
それどころかむしろ俺を嫌いだと言ってきた。
女に嫌われたことなんて一度も無い俺。
自意識過剰だって思われるかもしれないけど、事実そうだ。
なのに、今目の前で園芸大百科を読んでいる女・・・西脇彩夏は俺の周りの女とは何かが違っていた。
そんな彩夏は俺の親友の瀬名悠樹が好きらしい。
何で、悠樹なんだよと思って彩夏に聞くと彩夏は俺には分からないと言って来た。
確かに、悠樹を好きな彩夏の気持ちは分からない。
でも、そんな彩夏の恋が上手くいかなければいいと俺はいつも願っている。
最低なことだと分かっているけどそう願わずにはいられない。
心の優しい天使と心の悪い悪魔の二人が俺の頭の上に飛んでいたら俺は真っ先に悪魔を選ぶだろう。
そんなことを思ってしまうほどに俺は彩夏が好きだ。
「で、時雨の好きな人って誰なのよ・・・。」
さっきまで泣きそうな顔をしていた彩夏が興味津々に聞いてくる。
これだけ色々とアピールしているのに彩夏は俺が眼中に無いらしい。
もう、嫌だ・・・泣けてくる。
今まで、女についてなんて深く考えたことが無かったのに彩夏は深いどころか深すぎるところまで考えている。