初恋スクランブル
「でも、仲が良くて羨ましいよ。」
優しく笑って瀬名君は私の頭を撫でた。
そして、瀬名君は私と時雨にじゃあねと挨拶をして教室を出て行ってしまった。
出て行ってしまったことに名残惜しさを感じてポツリと私は呟いた。
「・・・・・・カッコいい。」
その言葉を聞いていた時雨は溜め息をついた。
「はぁ、またか。」
「いいでしょ、時雨には分かんないわよ。」
「はいはい。」
時雨の溜め息を無視して私は瀬名君を思い浮かべる。
さっきの彼は瀬名悠樹君。
時雨の幼馴染みで親友。
そして、私が好きな人でもある。
瀬名君を好きになって一年。
何かしら進展があるかもしれないと思っていたのに何も無いのは全て時雨のせいだと私は思っている。
「でも、悠樹は俺に用があって来ただけであって彩夏に用があって来たわけじゃないからな。」
「分かってるわよ。そんなこと・・・。」
時雨に釘を刺されて私は時雨を睨む。
別に何かに大きく期待をしていたわけじゃない。
少しは期待をしていたかもしれないけど・・・。
でも、そういうことをいちいちこの男は指摘してくるから嫌いだ。