初恋スクランブル




「振ってくれてありがとう。結衣と幸せになってね・・・。」




精一杯の笑顔で言う。

今の私は笑えているんだろうか?




「ど、どうして、それを・・・?」

「好きな人の好きな人くらい知ってる。ずっと、見てきたから・・・。」




いつも、瀬名君を見ていた。


でも、瀬名君と視線が合ったことなんて一度も無かった。



どうしてかって言うと・・・瀬名君がいつも見ていたのは結衣だったから。




「何だ、言う必要なかったんだね。西脇さんにお礼を言わなくちゃ・・・山瀬さんと出会わせてくれてありがとう。」





私の一番大好きな笑顔でお礼を言ってくれる瀬名君。

泣いちゃ駄目・・・。


必死に涙を堪える。




「いえ、必ず結衣を幸せにしないと私怒りますからね。」


軽くおどけて言うと、瀬名君は困ったねと言って笑った。



困った様子なんて微塵も感じさせない。


絶対に、瀬名君は結衣を幸せにしてくれる。




「僕と瀬山さんは幸せ者だね。こんな、恵まれた親友に囲まれているんだから・・・。西脇さんのこと時雨と同じくらい好きだよ。」

「・・・・・・嬉しくないわ。」

「そうだね、西脇さんからしたら嬉しくないだろうね。でも、時雨は西脇さんのことが好きだから・・・許してあげてね。」

「どうして、それを・・・。」




鈍い瀬名君が私と時雨に何があったかとか知ってるはずがない。


時雨はそういうことを話す奴ではないから・・・。





< 35 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop