初恋スクランブル
「振ってくれてありがとう。結衣と幸せになってね・・・。」
精一杯の笑顔で言う。
今の私は笑えているんだろうか?
「ど、どうして、それを・・・?」
「好きな人の好きな人くらい知ってる。ずっと、見てきたから・・・。」
いつも、瀬名君を見ていた。
でも、瀬名君と視線が合ったことなんて一度も無かった。
どうしてかって言うと・・・瀬名君がいつも見ていたのは結衣だったから。
「何だ、言う必要なかったんだね。西脇さんにお礼を言わなくちゃ・・・山瀬さんと出会わせてくれてありがとう。」
私の一番大好きな笑顔でお礼を言ってくれる瀬名君。
泣いちゃ駄目・・・。
必死に涙を堪える。
「いえ、必ず結衣を幸せにしないと私怒りますからね。」
軽くおどけて言うと、瀬名君は困ったねと言って笑った。
困った様子なんて微塵も感じさせない。
絶対に、瀬名君は結衣を幸せにしてくれる。
「僕と瀬山さんは幸せ者だね。こんな、恵まれた親友に囲まれているんだから・・・。西脇さんのこと時雨と同じくらい好きだよ。」
「・・・・・・嬉しくないわ。」
「そうだね、西脇さんからしたら嬉しくないだろうね。でも、時雨は西脇さんのことが好きだから・・・許してあげてね。」
「どうして、それを・・・。」
鈍い瀬名君が私と時雨に何があったかとか知ってるはずがない。
時雨はそういうことを話す奴ではないから・・・。