初恋スクランブル
「この前、山瀬さんが部活を見に来たとき・・・本当は時雨の気持ちに気づいていたんだ。でも、西脇さんは時雨と二人きりになりたくないだろうからって思って少し謀ったんだ。ごめんね。」
爽やかに笑っているけど、意外に瀬名君はやり手かもしれない。
そう思ってしまった。
「謝らないで・・・。時雨は嫌いだけど、大事な友達だと思うことにしたから。」
「そっか・・・。時雨のことよろしくね。」
「よろしくされたくないわ。そんなことより・・・結衣が待ってるから早く行って。」
「うん、ありがとう。じゃあね、西脇さん。」
私に挨拶をして瀬名君は私から離れて行った。
その後ろ姿を見ながら今までの高校生活を振り返った。
初めて人を好きになった。
苦手なものも貴方のためならできた。
誰にも負けないくらい想っていたのに、もう私の出る幕はない。
好きでした、誰よりも・・・。
泣きたくなくて必死に耐えていると頭の上に誰かの手が置かれた。
その手は私のよく知っている手で・・・。