レインドロップ
「ね…千里」
火照った身体に日陰を通る風が心地よくウトウトしてきた頃、ふと祐くんが口を開いた。
「何?」
「千里って……好きな人……いる?」
ちょっと…真剣な顔してる……?
「えっ…それって……男の子で…だよね?」
あまりに唐突な問いに当たり前なことを聞き返してしまった。
祐くんは黙って頷く。
「どうしたのーいきなり」
思わず笑ってしまった。
だって今まで、誰が好きかなんて、そんな話をしたこと無かったから。
「気に…なってたんだ」
私の瞳をじっと見て、真面目に聞く祐くんは、‘男の人’の顔だった。
そんな顔を見て、少したじろいだ。
「えっと…いないよ!」
特に隠すことでもないから正直に答えた。
バレンタインデーやクリスマスが近づくと、私の周りでもいわゆる恋バナってやつが花を咲かせていたが、私はいつも聞く側だった。
恋なんて、私にはまだまだだなーなんて思っていたから。