レインドロップ
ふたり
部屋に閉じこもっていたばかりの夏休みが明けた。
本当なら今頃……
何度もそう考えそうになったけど、必死に堪えた。
今日から2学期が始まる。
祐くんのいない通学路を歩いて、祐くんのいない教室で授業を受けて、祐くんのいないマンションに帰る。
耐えられる自信が無かった。
朝食のトーストを無理矢理喉に通して、何度も躊躇したけど、やっとの思いで玄関の扉を開けた。
するとそこには
「よぉ千里」
「蒼ちゃん……」
「行くぞ、学校」
私の手を取り歩き出す。
「自分から迎えに来るなんて……」
初めてだね、と言うと。
成長しただろ、俺も。と得意げに返された。
エレベーターを降りて外に出ると、いつもの通学路。
「……行くぞ」
ぎゅっと私の右手を握る手に、力を込める。
「……うん…」
蒼ちゃんの手は、少し震えていた。