レインドロップ
花火大会当日
昨日は祐の一周忌で、俺は早朝にお墓の掃除へ行った。
祐の好きだったお菓子の詰め合わせ袋を持って。
昼にもう一度来たときは何も変わっていなかったけど、閉園間際に再び来ると、お菓子の詰め合わせ袋が2つに増えていたのだった。
19時30分
来ないかもしれないな、と半分くらい思いながらマンションの下に降りると、いた。
毎年着てくる浴衣は着ていなかったけど。
植え込みに腰掛けて
「行きたくない」
の感情丸出しの顔で。
「千里」
手を引いて半ば無理矢理立ち上がらせる。
俺がほぼ引っ張って歩いているようなくらい、こいつの足取りは重い。
でも来たっていうことは、覚悟が出来た事だ。
壁を乗り越える覚悟が……
花火大会の会場へ続く、細い秘密の裏道を行く。
千里はずっと下を向いたまま。
やや早足にその道を抜けていく。