レインドロップ

会場は、例年通りものすごい人でごった返していた。

この人混みを見ると、毎年思い出す。

確かあれは初めて3人だけで行った花火大会──



『あれっゆうくんがいないよ!』

人混みをかき分けながら進んでいると、唐突に千里が声をあげた。

さっきまで祐と繋いでいた空の左手を振って俺にアピールする。

『たいへん!ゆうくんがまいごになっちゃったよ!』

『ほっとけよ。きっと人でみえないだけで、ついてきてるだろ』

『でも、まいごになってたらたいへん!さがしてくる!』

『おい!』

俺が止めるのも聞かずに人混みの中に探しに行って、結局千里のほうが迷子になったのだった。

やっぱりきちんと着いてきていた祐と合流して、迷子センターまで千里を迎えに行くと

『せんり、ないてないもん!』

目を真っ赤にして、バレバレの嘘をつかれた。




「迷子になるなよ」

「もう子供じゃない」

俺の手を強く握り返した。
< 53 / 80 >

この作品をシェア

pagetop