レインドロップ
会場は、例年通りものすごい人でごった返していた。
この人混みを見ると、毎年思い出す。
確かあれは初めて3人だけで行った花火大会──
『あれっゆうくんがいないよ!』
人混みをかき分けながら進んでいると、唐突に千里が声をあげた。
さっきまで祐と繋いでいた空の左手を振って俺にアピールする。
『たいへん!ゆうくんがまいごになっちゃったよ!』
『ほっとけよ。きっと人でみえないだけで、ついてきてるだろ』
『でも、まいごになってたらたいへん!さがしてくる!』
『おい!』
俺が止めるのも聞かずに人混みの中に探しに行って、結局千里のほうが迷子になったのだった。
やっぱりきちんと着いてきていた祐と合流して、迷子センターまで千里を迎えに行くと
『せんり、ないてないもん!』
目を真っ赤にして、バレバレの嘘をつかれた。
「迷子になるなよ」
「もう子供じゃない」
俺の手を強く握り返した。