レインドロップ
「千里ー」
俺の視界の左隅に、じっと空を見つめている姿が見える。
表情はわからないけど、なんとなく想像できた。
「…なに…?」
「楽しかったな」
馬鹿でアホで下らなくて、でも、最高に楽しかったあの頃。
「…うん」
その声は必死に涙を堪えている声で。
ちらっと視線を向けると、その肩は少しふるえていて。
「俺、こっち向いてるから、泣いてもいーぞ」
千里に背を向けるように座り直した。
せめてもの気遣い、ってやつだ。
「生意気…っ」
「うっせ」
鼻をすするのと頬をこする音は、なるべく聞かないようにして、うっかりこぼれそうになった涙をとどめるために、俺は必死に空を見上げていた。