レインドロップ
あの後泣き疲れたのか、気づくと千里は体育座りをしたまま、器用に眠っていた。
仕方なくおぶった身体は、想像以上に軽くて驚いた。
『今までね、思ってたの。
祐くんやみんながきっと心配するから、
頑張って笑わなきゃって。
辛い記憶ははやく忘れなきゃって。
でも、違ったんだね。
辛くても忘れちゃいけないことがあったんだ。
やっと……気づいたよ』
寝ぼけてるのか起きてるのか、帰り道に俺の背中でそう呟いた。
少し、前へ進めたような気がした。