レインドロップ

なんだこの女子。

初対面のくせにやけにしつこいな。

めんどくせぇ…

「別に。ガキのころから一緒にいただけ」

「ふーん。今までずっと一緒ってことは、佐伯さんのこと、よっぽど好きなんだね」

「は?」

「好きじゃなきゃ、一緒にいないでしょ?一途な恋って、私憧れちゃうなぁ…」

「あのさ」

いい加減頭にきた。

「俺はあいつのことただの幼なじみとしてしか思ってねぇし、好きだとか恋だとか、そんな意味わかんねぇこと勝手に想像すんの、やめてくれよ」

朝からいらつく。

俺は席を立った。

「へえ…そうなんだ」

女子に背を向けてドアへ向かう。

教室を出ようとしたところで、その女子が俺の前にスルッと入り込んできて、言った。

「ねっ。私の名前、相葉史奈(ふみな)って言うの。クラスは瀬戸くんの隣だよ。覚えておいてくれるとうれしいな」

何だこのめんどくせぇ女。

その嫌悪の気持ちが、顔に出ていたらしい。

「そーんな怖い顔しないでよ!瀬戸くんの彼女候補ってことで、これからよろしくね」

は?

なんて言った?

彼女候補?

ふざけるのもいい加減に…

「じゃあ私日直の仕事あるから、またね!ばいばーい!」

言うだけ言って帰って行くのかよ…

結局何したかったのかもわかんねーし。

面倒くさ。忘れよ。

「ふぁ…。ねむ。寝に行くか…」

気分も悪いし、ひと眠りをしに屋上へ向かった。
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